Media Platform Lab

所長インタビュー

“これまで誰も体験したことのない楽しみを視聴者に提供”

株式会社メディアプラットフォームラボ
取締役 所長 兼 技術戦略室長

香取 啓志

メディアプラットフォームラボが設立されて2019年度は8年目に入りました。この間に『ラジコ』を取り巻く環境も大きく変化しています。まずプラットフォームとしての『ラジコ』の現状について教えてください。

 2019年度3月に、これまで使っていたロゴを『radiko.jp』から『radiko』へ変更しました。この変更は、地上波ラジオサイマル配信である『radiko.jp』でしかできないサービスについての再定義です。地上波ラジオ放送が持つ多くの利点をもとに、過去8年間『radiko.jp』で築いてきた配信インフラや、エリアフリーサービス、タイムフリーサービスなどの『radiko.jp』ならではのサービスから、『ラジコ』は、さらに発展するための新たなメディアプラットフォーム開発を目標としています。

これまでの事業展開を振り返ってみると、どのように発展してきたのでしょう。

インタビューに答えるメディアプラットフォームラボ所長の写真

 『ラジコ』の事業は、参加局の支援で誕生し、エリアフリーのサブスクライブモデルの提供、そして今まさに地上波のビジネスモデルと同等のオーディオアドを展開し始めています。
 在京局を起点に実験配信を始めたオーディオアド事業は、2018年度は、在阪局まで展開しています。

AIスピーカーでのさらなる展開も考えておられるのでしょうか。

 AIスピーカ—は1980年代のキ−ワードのヒューマンインターフェースの一つで、当時コンピュータと人をつなぐマン・マシンインターフェースが出てきたのと同じ状況です。今後はAIも標準化され、デバイスについているボタンやSWと同じ、人が外の世界とつながるインターフェースとして展開してゆくと思われます。
 『ラジコ』にとって、これは非常に大きな仕様変更になります。ラジオの放送周波に合わせてチューニングしていたラジオが、『ラジコ』ではPCのWEBの操作にかわり、携帯電話やタブレットでは『ラジコ』アプリを使用して聴取していました。これがステ−ション名(参加局名)を音声で呼ぶと、希望の端末から音声が流れてきます。音量や、音質などもデバイスと会話することで希望のステーションを聴取できます。カーラジオなどで希望の放送局を選局する方法として、AIのユーザインターフェースは最適です。

ラジオの既存ユーザーと新たなユーザー拡大についてのお考えをお聞かせください。

インタビューに答えるメディアプラットフォームラボ所長の写真

 新しいものが出た時に最初に迷いなく触れにくるアーリーアダプターは、新たなユーザ拡大に欠かせません。そのためには絶えず市場に出てくるIPでコネクトし音声が出力できるデバイスに絶えず注目しています。
 とはいえ既存ユーザーが継続して聴取していただくためには、『ラジコ』に適したコンテンツの開発が大変重要です。既存のラジオの幅広い聴取者のライフスタイルに合わせた番組開発は、ネットで繋がることで聴取者の聴取状況が次第に制作側にも見えはじめています。制作者と聴取者双方が相互の壁に色々な窓を作ることで、新たなユーザーの趣味・嗜好にアダプトしたサービスを提供できればと考えています。

これからのメディアプラットフォームラボの役割や目標などを教えてください。

 これまでのメディア配信はTVやラジオそして衛星など電波を利用した放送が主役でした。これが1980年台からコンピュータ、通信、放送を融合したインターネット基盤が整備されてきました。2010年〜20年にかけてはインターネット基盤によるメディアビジネスが世界的にも電波を利用した放送にとって代わる世代交代の時代となりました。
 今まさに、このプラットフォームが大きく変革している時代です。
 この変革の中で、ラジオは『ラジコ』という今の時代に適合した配信プラットフォームを構築しました。世界的には、いま地上波ラジオはデジタルラジオの世代ですが、日本では普及していません。『ラジコ』はデジタルラジオの世代を超えて、現在日本中どこでも利用可能な携帯電話の4Gのプラットフォームや、多くの家庭、事務所などに張り巡らされたインターネットインフラによる配信プラットフォームとしています。
 現時点の役割は、これらのIPでコネクトされたデバイスに『ラジコ』のアプリを展開することです。これによりラジオをより多くの人が楽しんでいただける環境が生まれてきます。
 現在は、1億台以上も日本で展開されている携帯端末でのサービス開発が主軸ですが、目標はIPでコネクトし、音声が再生できるデバイスすべてで『ラジコ』が聴取出来ることです。